アメリカ大統領選挙の結果をどう見る? 【時事英語】

米国大統領選挙で、バイデンが選挙人過半数の獲得を確実にし、先ほど勝利演説(victory speech)を行いました。
前回の【時事英語編】で大統領選挙について取り上げたこともあり、今回の結果についてご質問も結構届ていますので、これまでの大統領選挙の結果についての印象を書いてみます。

▼事前の世論調査が大外れ!
バイデンが大接戦の末の勝利となりました。接戦は、事前の世論調査の多くが間違っていたことになります。
世論調査通りの結果であれば、バイデンが圧勝となるはずでした。4年前のヒラリー対トランプの時にも、世論調査とは異なりトランプの勝利。それと同じ程度の割合で今回も調査結果と異なれば、バイデンが接戦での勝利と私も予想していました。結果は、前回と同程度の世論調査の誤りということとなりました。

同時に行われた連邦議会選は、上院(1/3改選)、下院(全議席改選)も、民主党が議席を大きく伸ばすことが事前に見込まれていました。事前想定では、上院は過半数の50議席以上を奪還、下院は既に過半数ですがさらに議席を伸ばすであろうと。

ところが、これも結果は民主党が不振で、下院は過半数をなんとか確保しましたが、上院は現時点では50議席以上は難しい見込みです(ジョージア州の1月の決選投票(run-off)しだい)。

上院が引き続き共和党優位となると、いわゆるdivided government(大統領と議会をコントロール政党が異なる)となり、バイデン政権の人事や政策が議会で否決される可能性が高まります。
かなり大変な政権運営となるでしょう。

ちなみに、私が常にウォッチしていた世論調査のアグリゲーションサイトは次のようなものです。

Real Clear Politics
FiveThirtyEight
270toWin
New York Times : Today’s Polls

▼トランプの動員力は驚異的
一般投票(popular vote)でも、選挙人数(electoral college vote)でも負けたとはいえ、トランプは7000万票以上を獲得しました。これは今回の選挙を除くと、これまで当選したあらゆる大統領の得票をも上回る数です。
事前の世論調査では判断できないほどの動員力。4年前の選挙、今回ともトランプが候補者となると、議会選も含めて、大きくトランプ・共和党に票が動きました。支持するかどうかは別として、トランプの人を引き付ける力、動員力は認めざるを得ないでしょう。

レーガンに代表される伝統的な保守主義の共和党は、トランプの4年間で「トランプ党」(Trumpian)とも呼ばれる状況に変質してしまいました。トランプが大統領職を退いても、伝統的な共和党に戻ることはないでしょう。

▼何が選挙結果に影響したのか
直前にVital Japanのtwitterで私は次のように書きました。
「今回は、特にペンシルベニア州とフロリダ州が注目の的です。この2州をトランプが落とせば、バイデンの勝利が確実。ペンシルベニアは開票まで時間がかかる見込みのため、日本時間11月4日昼前の開票速報で、フロリダ州をどちらがとるProjectionが出るかがまず注目です。」
https://twitter.com/VitalJapan

結果としては、フロリダはトランプが獲りました。3%以上という予想以上の大差。
本日、ペンシルベニアが主要メディアによってバイデン当確となったことで、獲得選挙人の数が270を超えてバイデン勝利が決しました。

中西部、五大湖沿いのペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンのような州は、伝統的に工場労働者などに支えられた民主党が強い州でした。民主党の勝利を守ってくれる州ということで“blue wall”と呼ばれます。
4年前のヒラリーは、僅差でこれらをトランプに獲られ、blue wallが崩れて敗北する結果に。グローバリゼーションが進む中、工場や鉱山が寂れ”rust belt”と呼ばれるようになったこれら地域の人々にトランプのレトリックがうまく響いたことが大きな要因とも見られます。

この人々にバイデンが、ペンシルベニアの労働者階級の自分の出自や親しみやすさをアピールし、僅差ながらこれらの州を奪還したことが最終的な勝利に大きく貢献しました。

▼Latinoの動向に注目
今回の結果やAP通信が行った投票行動の調査などを見ると、Latino/Hispanicの動向が注目されます。(ちなみにLatinoとHispanicは、ラテンアメリカ系の米国人という意味で、日常語としては同じように使用してOKです。)
Vital Englishの先日の勉強会でも説明しましたが、フロリダの結果はLatinoの投票が大きく左右します。
Latinoは民主党寄りが多数派ですが、Latinoでもキューバ系やベネズエラ系などの社会主義や左翼独裁政権の国の出身者は、共和党を支持する傾向にあります。
今回のフロリダでも、トランプが、バイデンはバーニー・サンダースなどの極左の操り人形で、民主党は”socialism”だというレトリックが大きく効いたようです。その結果、フロリダは想定以上の差でトランプ勝利となりました。

ただ、選挙結果の分析で今回よく聞かれたのが「Latinoは、monolithic(一枚岩の)ではない」という言葉です。

これまで”red state”だったアリゾナを今回は、バイデンが僅差でひっくり返せそうですが、もしや獲れるかもと期待されたテキサスは大差で赤いままとなりました。
どちらもLatinoの有権者人口が急増していて、monolithicではないLatinoに対してきめ細かい選挙運動を行えば、これらが青くなる日も来るでしょう。

▼これからどうなる?
僅差のジョージア州などは、再集計(recount)を行うことを発表しています。すべての州で投票結果が確定した後、各州の承認を経て50州とワシントンDCに割り当てられたそれぞれの選挙人(elector)が12月14日に投票を行います。これがElectoral College voteです。本来割り当てられた候補以外に投票してしまう投票人も時々現れ、“faithless elector”と呼ばれますが、結果に影響を与えたことはこれまでありません。
その結果の連邦議会での承認を経て、1月20日に新大統領が就任(inauguration)します。

詳しくは、また機会を改めて勉強会等でお話するつもりです。

このコラムは、Vital English-英語勉強会のメルマガで配信した内容の一部再録です。

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